神様をめぐる冒険 その41
- 2019.12.07
- ストーリー
「カーブの投げ方教えたるわ」Y先輩がそう言った。
今まではライバルだったから、お前には教えたくなかったんだけど、もうええわ。マンモスにも許可は得たし。でも将来、同じ高校には来んといてくれよ。と、笑顔で言いながら、「お前のカーブはあれやわ、ひねり過ぎ。」
なにせ、本屋で立ち読みした「マンガで分かる少年野球入門」での知識しかないのだ。小学校時代は変化球禁止だったし、中学入学後もマンモスはとにかくまっすぐのコントロールもろくに出来ないんだから、カーブなんて100年早いという方針だったから、そりゃ上達しないわな。マンモスの目を盗んでこそっと練習してたんだけど。まるで使い物にならなかった。
「ええか、手首をひねるんじゃなくて、最初から90度ひねっときゃええねん。わかる?で、そのまま、指の間から抜くだけ。以上。」
「まぁ、やってみ。一回。」
教えられたとおりに投げる。お~、曲がった!その後、手首の使い方のコツなどを多少レクチャーしてもらった。なんだ、簡単じゃないか。今までの苦労が。
「おい、まっすぐの練習も忘れるなよ。今日も20球やからな。」
ノックを終えたマンモスがこちらを見て、いつも通りの大きな声で言った。はいはい、分かってますって。やります。やります。今日は2日も休んだおかげで肩の調子も良いし、もう少しカーブの練習したらやりますから。
縦に抜くだけか。落ちるカーブってやつだよ。お~、俺にも投げれるやんか。
O先輩もいいボールだと今日はやたらと褒めてくれた。元々O先輩はキャッチングが上手く、捕るときにすごくいい音がする。今まではあれがダメ、これがダメと怒られてばかりだったのに。いちいち、褒めてくれるもんだから、さらに調子に乗ってしまう。
僕のせいで先輩たちの中学校の野球生活が終わってしまったのに。練習前までの落ち込みが、なんだったのか忘れるくらい、ワクワクしていた。この時は。
練習が終わった。普段なら、汗をかいたアンダーシャツはすぐに着替えて、肩を壊さないように注意するんだが、調子に乗ったまま、O先輩を捕まえていろんな話をした。今日はこのまま、いつまでも話を聞けそうな気がした。
中学に入って、野球部に入って、今日が一番楽しかった。
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