神様をめぐる冒険 その40
- 2019.12.06
- ストーリー
父親の勤める会社の社宅の4階に住んでいた。家にはエアコンが無く、扇風機も肩を冷やすとよくないからと、なるべく当たらないようにしていた。すべての窓と玄関の鉄製の扉を全開にし、風を通そうとしているのだが、暑いものは暑い。苦痛だ。
試合の次の日とその次の日の2日間は珍しく練習が休みになった。マンモスも人の親だし、あまりに家族をほっておくのも。まだ幼稚園に通うかわいい双子の女の子と奥さんと4人でどこかに出かけるらしい。
僕は夏休みにすることもなく、2日とも家でゴロゴロしていた。逆に普通通り練習をやってくれてた方が気がまぎれたのに。この2日のことも、これまたあまり記憶がない。もちろん、宿題なんて1ミリもやってない。
学校で先輩たちと顔を合わせたらなんて言うべきか。なんで、あんな簡単なフライを落としたのか。2アウトだから、全然焦る必要もなかったのに。ずっと、あの時のことを考えていた。なんで、俺だ。
2日後の午前10時。僕らはいつものグランドに集まった。
そこには、マンモスと2人の先輩がいた。なにやら、にこやかに談笑しているO先輩とY先輩だった。彼らはいつものユニフォーム姿ではなく、体操服のジャージを着ていた。我々の存在に気付くと、多少引き締まった表情を作ったが、それでもO先輩は何かすっかり肩の荷が下りたような、先日までの緊迫した雰囲気が無くなっていた。ひとことでいうとニコニコしていた。「今日はかわいい後輩の皆さんのために二人でお手伝いに来ました。」「ビシビシ行くけどね、よろしくね。」
いつものように、ランニングから練習を始める。アンダーシャツを着替えてから、柔軟。ブルペンに向かうため、いつもキャッチャーを務めてくれていた同級生の滝本君に声を掛けようとしたが、新チームでの彼は全体練習の要だ。下級生の誰かに声を掛けるか、どうしようかと一瞬考えたところで、ベンチに座っていたマンモスがそれに気づいたようだ。ノッカーをしていたO先輩にブルペンに入るように指示し、自分がノッカーを交替すると言った。
「お願いします」帽子を取ってお辞儀をしてから、キャッチボールを始める。はじめは近い位置から。徐々に距離を伸ばし、一旦、遠投の距離まで広がる。それからブルペンに入った。
そこに、それまでノックの練習の手伝いをしていたY先輩がブルペンに近付いてきて、僕の後ろから投球練習を確認しだした。黙ったまま。
しばらくして「カーブの投げ方教えたるわ。」と言った。
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