神様をめぐる冒険 その52

神様をめぐる冒険 その52

自分の意志ではなく、元の世界に戻ってきているようだ。そして、自分の意志ではなく、再雇用の説明会に参加している。

サガワのおっさんよ。あんたの「全ては自己責任」は、どこに行った?こんなもん、あんたらに振り回されてるだけじゃないか。

今このまま、ここを出て行って、家に帰れば、普通に日常に帰れるってことか。

どうする?しかし、ここでいつもの自分の悪い癖が出る。今ステージで聞いた新しい経営者の話が本当ならば、また同じメンバーで楽しかったお店に戻れるんじゃないか?少しそんな考えが頭をよぎる。人間の潜在意識は「現状維持」こそが安全だから、常にそこに戻ろうとすると聞いたことがあったな。心の声を聞く。いや、心の声ってなんだ。頭で考えている時点でそれは顕在意識の方だから、それこそ、一時の感情に流されているだけのことか?

一息ついてみる。天井を見上げる。そうだ、店長は?同僚は?何より、元彼女は?

なんか、でも、どうでもいいような気がするな。なんかよく見ると、思ったより天井高いな。電球変えるの大変そうだなぁ。誰がやるのかなぁ~ふ~。疲れた。お尻に根っこが生えたみたいに椅子から立ち上がれなくなった。なんかもう、めんどくさい。そんな風に思ったとき。

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『このまま、また、流されて生きるのか?お前は。』

心の声が聞こえた。確かに聞こえた。

なるほど、これが神様かもな。

形は見えないが、確かに存在する。

そんな気がした。

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目の前に突然人影が現れる。店長だ。

「水臭いな、来たら来たでメールぐらい入れろや。」彼は笑顔でそう言った。

「今の話聞いた?なんとかやっていけそうっていうか、よくなりそうやと思わん?」「よく考えて判断しよ。」「今のところ、俺はやっていこうと思ってる」

司会者がそろそろ着席するようにマイクで放送を始めた。

「じゃあ、よく考えろよ。」そう言いながら、店長が離れて行った。

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