神様をめぐる冒険 その15
- 2019.11.10
- ストーリー
「う~ん、何から話したらええかな?」
おっさんは一度天井を見上げ、こちらを見直すとこう言った。
「まず順番でいうと、ワシは君のお父さんの上司やったんや。Mで。」
「いや、だから。。」
「まぁ、聞いてくれる?ワシも元はMの研究者で、君のお父さん、つまりツルハルユキ君の入社以来、直属の上司やったわけやな。もっともワシは君のお父さんと違って、たいした才能は無かったけど。君のお父さんは研究者というよりアーチストっていうんかなぁ、独特の発想力の持ち主やったな。最初から。」
「お茶ちょっとぬるいな。コーヒー飲むか?」「結構です」「甘いものは?」「大丈夫です。」「遠慮せんでええで。ちょっと待ってや。ワシが飲みたいがな。」
結局、これまたあまり熱くはないインスタントコーヒーと木彫りのお盆に入った年寄りの好きそうなバラエティタイプの小さな和菓子を持ってすぐに帰ってきた。
「当時我々のおったチームは少数精鋭っていうか、まぁ社内でも変人の集まりっていうか。頭は切れるけど、会社のメインにはおられへんっていう。すぐにお金にはなりそうにないことやってるからな。でもまぁ、将来的には必要やろ?っていう。こう見えてもワシも○大の大学院出身やからね。見えへんやろ?」
「すごいですね。」 誰もが知っている頭の良い人が行くところ、別世界。
「で、まぁそんな変わりもんの集まりが量子論を応用した計算機を作ろうとしとったんや。そらコンピューターもろくにない時代やで、考え方がぶっ飛んでるやろ?ツル君は科学とか得意?」
「いやまったくだめです。」
「電気屋さんやから、パソコンぐらいわかるやろ?」
「売ってるだけで、しかも担当外なんで、まったく。」
「ほんなら、がんばってなるべく簡単に言うわな。」
「まぁパソコンに限らず、デジタルっていうのは0と1の組み合わせなのは知ってる?」「0は0であって1ではないわけやな。もちろん、1は0ではない。その組み合わせで計算するんやけど」「もちろん、今のパソコンの半導体やなんかに量子学はおおいに役に立ってるんやで。」「我々が量子に関心があったんは」
「 そもそも量子ってやつは変わりもんで、人が見ていない所やと『波』としてふるまってるくせに、人に見られたら『あ、今、めっちゃ見られてる!』ってことに気付いて、とたんに『粒』として振る舞い始めるんやわ。不思議やろ?」
「『シュレディンガーの猫』の実験って知ってる?」
「状態の重ね合わせっていうんやけど、箱の中の猫は『死んでもいる』し、『生きてもいる』っいう。。。」
ちんぷんかんぷんとはこのことだろ?
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