神様をめぐる冒険 その16

神様をめぐる冒険 その16

「まぁ、実験って言うても、思考実験なんで実際にはやってないんやけどね。せやけど、生き物なんて実際は『生きてる』か、『死んでる』かのどっちかやん?別に瀕死で生死の境を彷徨ってるってことじゃないんやで。でもこの実験ではどう考えても猫が生きている状態と猫が死んでいる状態が重なり合っていることを認めざるをえん。っていうな。ほんま、なんじゃそら!やろ?」

おっさんは立ち上がり、事務机からコピー用紙を何枚かとサインペンを持ってきた。お菓子の入ったおぼんを横に押しやる。「おそらく電気製品」と「違和感のある硬貨」も同じように横に押しのけられた。

まず最初に大きな箱を描く。その中に小さな粒。電気テスターのような機械。骸骨マークの入ったボンベ。そして、猫。意外と上手だ。

「密閉できる箱の中に放射性物質が一粒あります。これが1時間以内に核分裂する確率は二分の一です。核分裂したらこのガイガーカウンターって機械が反応します。と。そうするとここの毒ガスが出て、このかわいい猫ちゃんはあの世行き!っていう装置があります。と。」

「この放射性物質は「核分裂した状態」と「核分裂していない状態」のどちらでもあるっていうか、2つの状態が重なり合っているわけやねんね。量子の世界では。そして、この重なり合った状態の量子様に、このかわいい猫ちゃんの命は預けられている。つまり、死んでもいるし、生きてもいる。」

「で、さっきも言うたけど、人に見られた時点で、どっちかの状態になってしまうわけ。」「ユー アー アンダースタンド?」「ついてきてる?」「オッケー?」

ぜんぜん、首を振るのも忘れるくらい。

「で、もっと訳が分からんのが、シュレィディンガーちゃんはこの重ね合わせの状態って考え方自体を否定するために考えたらしいんや、この実験。クレイジーやろ、ますます。」

「さらに、ペアの量子君はどんなに遠くに離れていても、片方が変化すると同じように、もう片方も変化するんやで。距離とか時間とか関係ない子やねん。この子は。」

「ここ大阪と東京でも。ニューヨークでも。もっというと宇宙のはるか彼方でも。」

Thanks for installing the Bottom of every post plugin by Corey Salzano. Contact me if you need custom WordPress plugins or website design.