神様をめぐる冒険 その24

神様をめぐる冒険 その24

誰かに電話してみよかな?

こういう時に電話してみる相手って?誰?

携帯電話の連絡先をスクロールしてみる。元カノジョの番号だ。あんなに平坦なメールしか送りあっていないのに、弱気になると女の人の声を聞きたくなるなんて。どうかしてるな。先に進むと、T次長の番号が出て来た。一瞬試してみようかとミドリのボタンに触れたが、すぐにアカのボタンを押し直した。はなからそうだろうと思っていたが、結局、誰も掛ける相手がいない。なんてこった。自分では周りに気を遣い、みんなと揉め事も起こさずに上手くやってきたと思ってたのに。いやいや、ここは別の世界だから、知り合いだっていないし、だいたい携帯電話だって使えるかどうかわからない。やっぱり、辞めておこう。店員さんが帰って来ても困るし。いや、でも、とはいえ、やっぱり、しかし。

ヤケクソで最後の着信相手である店長の番号をリダイヤルしてみた。

プッ、プッ、プッ、プルルル 

えっ!呼び出してる?

「もしもし」

小声で誰かが出た。この声は店長だ。

「やっぱ、来る気になったんかいな!ちょっと、もう今始まる前で大きい声で喋られへんけど、待ってるからな。早よ来いよ!」

一方的に話して、彼は電話を切った。

いったいどうなってるのか?話の内容からすると、元の世界の店長に繋がって、再雇用の説明会に来るのか?という話だが、そんなことがあるのか?じゃあ、こっちの世界の店長も説明会で僕を待っているのか?そもそも、こっちの世界に僕はいることになっているのか?だいたい、よく考えたら、携帯電話の契約だって前の世界のものだよな。てことは、前の世界に繋ってる。電波だけ?それとも、夢でも見てる?

マンガやドラマみたいに自分のほっぺたをつねってみた。はずかし。普通に痛いがな。もう一度、店長に掛けてみよう。

今度は出ない。しかし呼び出しはしている。留守電にはならない。

一旦、切ってみる。再度かけなおそうか、迷う。

「お客様どうかなされましたか?」

後ろから声がした。最初に声を掛けた先程の店員さんだ。

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