神様をめぐる冒険 その42

神様をめぐる冒険 その42

部室の前のベンチに座り、O先輩と二人になった。こうして改まって話をすることは初めてだ。Y先輩と同級生たちは先に帰った。

O先輩に「どうしてあんな理不尽な上級生ばかりの野球部を辞めなかったのか」とか、「どうして僕たち下級生に辞めるなって言ったか」とか、さらには「マンガのキャプテンは好きか」とか、いろんな質問をした。でも、最後まで先日は僕のせいでごめんなさいの一言が言えなかった。

夏休みなので日が長い。でも、頃合いを見て、小一時間ほどか、O先輩は帰ると言った。「今日で最後や、中学校の練習に参加するのも。俺はK高校に行くつもりやから、で、来年お前をスカウトに来るんで、それまで頑張れよ。」

僕は有頂天になっていた。

次の日も朝から練習だった。朝起きると、肩に激痛が走った。今までも痛いとか張りがあるとかが常だったが、ここまでのひどい痛みはない。まったく肩が上がらなかった。マッサージをしたり、ストレッチをしようとしたが動かない。それでも練習には時間通りに行った。せっかく憶えたカーブを練習したいし、走っていつものルーティンをすれば何とかなるかもしれないと、思った。

いつものようにグランドを走る。走りながらも何とか肩が動くように軽く振ってみたり、回してみようとするが動かない。ストレッチをいつもより入念に行おうとするが、やっぱり、肩が痛くて動かない。どうにもならない。昨日の夜はいつものように風呂に入りながらマッサージもして、特別な違和感はなかった。

どうにもならなくて、マンモスに打ち明けた。「しょうがないから、今日は延々走っとけ。カーブの投げ過ぎちゃうか?あんまりひどかったら、明日は休んでええから、医者行って来い。ええか。」

そして、僕の野球人生はわずか14歳中学二年生で終わった。

あの時、カーブの練習ばかりしなければ。

あの時、なぜO先輩は先に着替えろと言ってくれなかったんだ。

そもそも、大人はみんな成長期の子供に毎日毎日200球も投げさせやがって。

マンモスも、少年野球のコーチも、そして親父も。

本当はあの時すぐに着替えなかった自分の責任だってわかっている。

でも、全て周りの人のせいにした。俺のせいじゃない。せっかくの才能をつぶしたのは。

こんなに努力させられたのに。

こんなにいっぱい走らされたのに。

あんなにいっぱい投げさせられたのに。

みんなの期待に応えようとしてあげたのに。

野球の神様なんて絶対にいない。

なんで俺だけがこんな目に遭うんだ。

俺は運が悪い。なにもかも嫌になった。

Thanks for installing the Bottom of every post plugin by Corey Salzano. Contact me if you need custom WordPress plugins or website design.