神様をめぐる冒険 その22

神様をめぐる冒険 その22

エスカレーターの両側に各メーカーの広告ポスターがある。そのうちのひとつでは一昔前に人気のあった映画俳優が商品を手に微笑んでいた。思い出そうとしても名前が思い出せない。どうやら、あちらではあまり見なくなってもこちらでは人気があったりするのだろう。そこらあたりのさじ加減が、より頭の中を複雑にしている。全く見たことのないものばかりなら、夢でも見ていると諦められるのに。

パソコン関連のフロアについた。確かにリンゴのマークが目立つ。フロア全体がモノクロでとても電気製品売り場に見えない。壁にはモノクロのアインシュタインのポスターが貼ってある。

『Think different』

おっさんによるとアインシュタインは最後まで量子学を信じていなかったらしい。僕からすれば、どちらの話も難しすぎてよくわからないが、こうして現実に見せられると、天才科学者よりも、さがわのおっさんの方がわかるような気がしなくもないが。

ぐるりと一周する。

意を決して、なるべく、おとなしそうな店員さんに声をかけた。いろいろ聞かれてもめんどくさそうだし、全くそっけなくされてもまたそれはそれだし。まぁ、でも、そもそも一番の目的は時間つぶしではなく、これなんだから。

「あの~、すいません。この機械なんですが。」ポケットから『猫の機械』を出して、尋ねてみた。

「はい、いらっしゃいませ。」

「これなんですけど、ちょっと古いもんで調子が悪いみたいで。」

彼は裏から表からまじまじとそれを確認する。

「う~ん、ちょっと。Mの製品ですかね?いやぁ~、見たことが無いですね。」

少々お待ちいただけますか?と言うなり、少し離れてインカムでどこかに連絡した。「ちょうどMの販売担当がおりますので、すぐ来ます。お待ちください。」

エスカレーターは使わずに、階段の方角から中年の担当者が現れた。T次長だった。

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