神様をめぐる冒険 その26
- 2019.11.22
- ストーリー
「くれぐれもお願いします。」
吉田とAは小声で何か言いながら、2人でバックルームに入っていった。
どうしよう。どうしよ。いや、まじで。ほんまか?いやいや、単なる向こうの勘違いか。確かに名前を確認してなかったのは失敗だが、T次長だろ、確かに。もし違ったって、ちゃんとMのジャンパー着てたし、いや、でもここは違う世界か。もうわけがわからん。
万一のためにと、聞いていた「さがわさん」の電話番号に電話するしかない。指が震える。今考えてみれば、違う世界に電話が通じる謎も解決していなかったが、そんなことを考えている余裕はない。ミドリのボタンを押す。頼む!出ろ!
「ハイ~もしもし~」のんきな声でおっさんが出た。
「あっ、ツルです。すいません!とんでもないことになったかも知れなくて!」
早口で今目の前で起こっていることを説明する。
「そらツル君。君が悪いわ~」相変わらずのんきな言い方だ。腹が立つ。
「ツル君な、おっさん出発前にあんまりソレ人に見せたらあかんって言うたやん。君、ちゃんとハイって言うとったがな、ほんまに。」「なんせソレは今ではなかなか手に入らへんから、みんな欲しがるねんなぁ~」
「いやでも、そんな、ちゃんとした電気屋でちゃんと制服着てる店員さんにこれが何かちょっと聞いてみようと思っただけですよ。それが、みんなでぐるになって取り込み詐欺みたいなことします?」「だいたい、あなたが詳しく説明してくれなかったから、時間もあったし、ちょっと調べたろと思ったんでしょ!」
大きな声が出せないが、語尾がきつくなる。
「ほんまに、詐欺されたと思うか?ツル君。よく思い出してみ?」
「いや、だからさっき説明した通り、みんなグルで。。」
「それやったら、もうそこにおってもしょうがないと思うで。」
「しょうがないって、じゃあ、どうすればいいんですか?」
どいつもこいつも怒鳴り散らしてやりたいが。
「自己責任やな。どの世界でも全ては『じ こ せ き に ん』でっせ。それ以上そこにいても、しょうがないんちゃいまっか?約束の時間に間に合いまっか?」いらつく変な大阪弁。
「なにを言うてんねんな、おっさん。だいたい、あの機械ないと元の世界に戻られへんのと、ちゃうんかいな!」つい、大きい声で怒鳴ってしまった。あわてて、声を潜めて話す。「何とかしてくださいよ。お願いしますよ。佐川さん。そもそも、なんでこんな目に!」
「ふふふ、だからそれがあかんと思うで。君のお母さんも言うとったわ。うちの息子は『いつもいつも流されるまま。』で、『いよいよ困ったら人のせい。』ってな。」「早よ判断せんと間に合わへんのとちゃいまっか?どうしまっか?電話の充電も心配でんなぁ~」「電話代と電池もったいないから切りまっせ~」
あ~!むかつく!どうする!
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