神様をめぐる冒険 その27
- 2019.11.23
- ストーリー
どうする?どうする?どうする?
「はい、はい、ツルちゃん。どうする~。どないしょ~時間無いんちゃうか~」むかつく!このおっさん!
電話を切る。
バックルームからAが出てきた。どこかに電話している。インカムでは無く。こちらに近づいてくる。一歩、また一歩。表情は無い。まるでお面をかぶっているかのような顔だ。さっきは良く見なかったからか、肌もプラスチックにしか見えない。しまった。なにかに巻き込まれたのは明白じゃないか。おっさんののんきな声とのあまりの対比にサブイボがたった。
「あっ、すいません。僕の方が勘違いしてたみたいです。すいません。失礼します。」椅子から立ち上がり、軽く会釈をして、回れ右をした。Aは電話を離し、「お客様、まだ確認中ですよ。」これまた抑揚のない低い声でそう言った。背中でそれを聞きながら、速足で元来たエスカレーターに向かう。急げ。
エスカレーターを立ち止まらずに、速足で歩いて降りた。後ろは振り向かず。いや、振り向けなかった。考えろ。
入店した地下の連絡口ではなく、1階の正面口から出る。さらに速足になる。一度、振り返る。誰もいなかった。ような気がする。次に携帯電話を見た。おっさんに指定された時間まであと少ししかない。時間の感覚が良くわからない。確かに電気屋に入店したのは時間に余裕があったからなのに。たかだか2.30分の話だと思うが、2時間近くたった計算だ。もう一度、振り向く。やはり、誰もいないように見えた。
生垣の切れ間から通りにやや身を乗り出し、右手をあげる。ラッキーなことに1台目のタクシーが停まった。自動にドアが開く。
おっさんに渡されたメモの住所を運転手に告げる。ドアが閉まる。動き出す。再び、電気屋の連絡口が見えた。そこにはAがいて、こちらをじっと見ていた。
本当のところはこれが正しかったのかわからない。おっさんに急かされたとはいえ、自分で決めたのだから、おっさんの言うように自己責任なのだろう。相変わらず、心臓はバクバクしているが、一息ついた気がした。
「運転手さん?」
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