神様をめぐる冒険 その3

神様をめぐる冒険 その3

平成3年、僕はイラストレーターを諦めて、勤め人になることにした。こうしてみると、流されてばかりの人生だったような気がするね、最初から。

世の中のバブル景気はそろそろ終わろうとしていた。そんな中、僕は何かに乗り遅れるような気がして焦り、毎日そわそわ、そしてイライラしていた。イラストの仕事だけでは大した稼ぎではなかったので、生活はアルバイトがメインで、当時はまだ終身雇用や年功序列なんてものがかろうじて信じられていた時代だったから、この先どうなるのか?自分は本当に才能があるのか?いや、きっと出来るはず。いや、でも。。。などと、やっぱりいつもそわそわ・イライラしていた。親や周りからのプレッシャーももちろんあったし、いったん就職して主たる収入を得ながら、チャンスを窺うべきかべきかなんて風に弱気になりつつあった。

ある日のクソつまらないアルバイトの帰り、まだ分厚かった転職雑誌をコンビニで購入した。2種類あったうちのより分厚い方だ。その方が少しでもより何かの可能性があるんじゃないか?そんなことあるわけないのに、そう思った。翌日、適当に選んだ4社か5社に、雑誌と同時に購入した履歴書に同じくその時買った切手を貼って応募した。それほど本気ではないつもりだったが、これまた流されるままだ。同じ内容の履歴書を何枚も書き、今のところ自分は何者でもないよな。なんて考えながら。薄々の内容を何とかふくらまして記入した。

3日ほどして早速連絡が来た。当時は携帯電話もなく、独り暮らしで電話も引いていなかったから、代わりに記入していたアルバイト先に。「いつ面接に来ていただけますか?」

イラストレーターになろうと思ったのは決して絵が好きだったからではない。特別才能があったとも思えない。今となっては。父親の影響だ。父親は東証一部上場企業のサラリーマンだった。工業高校卒で入社してから、本人によれば実力で出世したらしい。きっとそうなんだろう。彼の口癖は「大卒っていうだけで出世してる奴等には負けられない」だった。「世の中は平等でもなんでもない。学歴で人は判断されるんだから、お前はとにかく大学に行け」

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