神様をめぐる冒険　その54

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「それでは、もう少しだけお話をさせてください。私は高校を卒業後、キャリアのスタートをＭから始めました。」

少しリラックスした雰囲気が流れる。

「私は工業高校しか出ていません。そして、研究職で入社したわけでもありません。一般職入社でいわゆる町の電気屋さんの担当営業とでも言いますか、まぁ御用聞きですね。そこからです。最初は。今でこそ雇われ社長をさせてもらって、皆さんの前でこうして話をしていますが、別にエリートコースを歩んできたわけでもなく、何のコネも無かった青年時代でした。」

「営業職とはいえ、口下手で、最初は電気屋さんの奥さんと話すのも照れて上手く話せなかったくらいです。工業高校出身なんで女の人としゃべることもほとんど無かったですからね。大変でした。その頃の自分が今の私を見てみたらびっくりすると思いますよね。」

「あぁ、奥さんと言ってもですね、自分の母親より年上かな？くらいの妙齢な。。あぁ～まぁおばちゃんです。電気屋のおばちゃん。よくかわいがってもらいました。なつかしいなぁ。」

「で、当時の上司がＴさんと言ってですね。彼もたたき上げタイプの営業マンで、すごく成績が良かったんですが、バリバリの営業マンってタイプではなくてですね、上手く懐に入っていくって言うかね。彼のおかげで20歳くらいの頃には、ちょっとはましな営業マンになれた。私が若かりし頃の恩人です。ちなみに今は退職されて梅田の駅前の某家電量販店でいまだに現役でお仕事されてます。」

「ミスターＭなんて言われて、『Ｍの製品のことならＴさん』と各売り場の店員さんに頼りにされてるみたいです。私もたまにご挨拶がてら顔を見に行くんですが、皆さんもこのあと機会があれば『Ｍの製品でちょっと質問があるんですが』なんていうと、十中八九Ｔさんが呼ばれると思いますよ。う～ん、俳優の大柳雄一郎に似てたら間違いなくその人がＴさんです。営業の極意って言うんですかね、少し体感してもらえたら今後の皆さんの役に立つんじゃないかなと思います。」

Ｔ次長のことじゃないか？でも、Ｔさんはすでに亡くなっているはずでは？こっちの世界では。

そして、あっちの世界で確かに遭った人がやっぱりＴさんで、こっちの世界の新社長の元上司なのか？

そもそも、今いる場所はどこだ？

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