神様をめぐる冒険 その13

神様をめぐる冒険 その13

出されたお茶に口をつける。思ったほど熱くはない。時間的に電気ポットのお湯ですぐに入れてきたのだろう。チャンスだ。幸いなことに僕は猫舌でもないし、これぐらいの温度ならとっとと飲み干せる。このまま、まさにお茶を濁しておさらばするか?これだけ思い出せないのだから、それほど重要な相手でもないのだろう。申し訳ないが、ただのおっさんだ。

「ところでツル君。これ見たことある?」

突然、名前を呼ばれる。

おっさんはそう言いながら、事務所奥のデスクの方に向かう。2段目の引き出しから何かを取り出し、再びソファに戻ってきた。確かにお店のお客さんには自分の名刺も配るし、仕事中は名札もしているから、おっさんが僕の名前を知っていても不思議じゃない。しかし、今の一言はさっきまでと明らかに声のトーンが違った。

「どう?」

「ちょっといいですか?」

机の上に置かれたそれを手に取る。

「すいません、いやちょっとわからないですね。」「なんですか?」

裏返して、あらためてよく見てみる。折り畳みサイズの携帯電話Nと大きさはほぼ同じぐらいか?少しそれよりも若干薄手で、色はガンメタリックとでもいうべきか?四角いボタンが2つと小さな液晶画面がある。それ以外は、何もない。充電のためのソレや、電池を入れるためのアレもない。電気製品ではないのかな?でも液晶やろ、コレ。割と年季が入ってるな、小傷だらけやん。あれ、なんかうっすら書いてある。。。

「なんや、ツル君は革命屋は初めてかいな。」

やっぱり、見間違えじゃなかったのか。革命屋?

あれ、うっすら見えるこのマークはもしかして、Mがロゴマークを変更する前に使っていたやつ?

「だってそれ、君のお父さんが若いときに作ったものやからね。」

「えっ?父ですか?」

父親は合成樹脂の会社で研究開発をしていたサラリーマンだ。金属で出来たおそらく電気製品らしきものを作っていたなんて聞いたことがない。

「当時は画期的だったんやで、それは。名器中の名器だよ、いや、ほんとに。」

「そいつのおかげでうちのお店もずいぶん儲からしてもらった。」笑顔。

「じゃあこれは?」

おっさんが上着のポケットから何かを出してテーブルの上に置く。

500円硬貨のようだ。

いや、少しおかしい。なんだこれ?

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