神様をめぐる冒険 その66

神様をめぐる冒険 その66

受付の男の後ろを歩いてついていく。

「結局、あいつらは騒ぎを起こすだけで、本当に誰かを殺すとか、傷つけるとか、そこまではしないんですよね。自分たちを捕まえるといろいろと大人の事情で 困る偉い人がいるから、毎回一線を越えない限り、うやむやで逃げ切れると知ってるんですよ。」

「マスコミも知ってても何も報道しないですから。」

確かに都会のど真ん中で爆発事件が起きているのに、周りでは救急車や消防車のサイレンといった音が全く聞こえない。静かに時だけが流れていく。会場を出てしばらく歩き、別のビルのエレベーターに乗った。地下にある時間貸しの駐車場に入る。入り口からほど近い場所にお目当ての車があった。

「乗ってください」受付の男はセダンタイプの乗用車の後ろのドアを開けてそう言った。これこそ黒塗りといってよいくらい車体はピカピカに磨き上げられていた。

「どこに行くんですか?」僕が聞く。

「ただ最近は携帯電話のカメラが進化して、映像がネットに出回ることが多くなってきたので、警察も仕方なく一味の中でも小物を捕まえているみたいですけどね。」聞こえなかったふりをしてか、受付の男はそう言った。

「しかも、必ずすぐ出て来れそうな微罪ですからね。タチしょんべんで捕まえたのと同じぐらい。みたいな話ですよ。ほんと。」

なるようになるはずだから、あえてそれ以上は聞かなかった。窓の外の景色を眺める。ここはどこだ。見たことあるような、見たことないような。

高速道路の入り口にさしかかる。自動のゲートを通る。バーが跳ね上がる。料金は『6,500円』どこまで行くのか?アッチの世界も前払いだったっけ?金銭感覚でこっちの世界は物価が高かったよな。特に電車代も高かったから、意外と近場なのかな。

「すいません、ラジオをかけさせてもらってもいいですか?」言い終わるか終らないうちに受付の男は小さくラジオのスイッチを入れる。どこかで聞いたようなジャズの音色が床から流れ出てきた。

疲れたな。まるで睡眠薬のように音楽が頭の中に膜を張ってくる。

仕方ない。なるようになるだろ。

目の前が暗くなった。

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