神様をめぐる冒険 その20

神様をめぐる冒険 その20

第2章

「8分違いの世界」

ポケットの中には例の「猫の入った箱の機械」があった。名前を聞くのを忘れたが、おっさんは「その機械」を「それ」としか言わなかった。おっさんによると、この世界での僕の役割は決まっているらしい。地図を渡されてそこに行くように指示された。歩き出してみる。見た感じは普通の街並みだ。普通の建物に、看板や道路標識、住所表示など。ほとんど違いが判らない。あえて言うなら、使われている漢字が少しおかしな感じだ。中国から送られてくる輸入品の段ボールに書かれているようなというか、フォントがふつう使わないようなというか。でも、それほどの違和感はない。いや、やっぱり普通かな?気にして見るからそんな風に思うだけなのかもしれない。たまに人とすれ違ったが、特段変わった様子にも見えなかった。

おっさんの書いた雑な地図とやや格闘しながらも10分ほどで何とか駅に着いた。言われてみれば、例の変な「さがわ革命店」から普段通らない違う道を通って、普通に駅に着いただけなのか?駅はいつも通りに「普段の駅」に見えた。近づくまでは。

出発する前におっさんに両替させられた。10,000円硬貨2枚と僕の財布の中の10,000円札が1枚。騙されているのか、正確なのか、「そのくらいが大体のレート」だそうだ。10,000円が20,000円になったのだから、得をしたのか?それとも、単純に損させられたのか?

駅の看板を見上げる。やはり、微妙に文字がおかしい。改札口まで行き、試しに手持ちの定期券を通してみようとしたが、やはり、ブザー音とともに赤い×マークが出た。駅員に声を掛けられる前に、回れ右をして、手前の券売機に向かう。

「梅田まで1,250円?」

いやいや、普通は200何十円だから、5倍?

現実を見せられて、やっぱり「違う世界に自分がいるんだ」ということに、何ともいえない感情が湧きあがった。なんでこうなった?

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